平日は仕事があり、役所にも現地にもなかなか行けない。そんな会社員の方が農地を相続したときの進め方をまとめた記事です。
初期の状況把握は、郵送・電話・インターネットでかなりの範囲を進められます。 名義や地番の確認、区域区分の調べ方、登記事項証明書の取得などです。
ただし、来庁が必要な手続きがあります。 横浜市中央農業委員会は、農地法3条の3の届出について相続登記が完了してから窓口へ持参するよう案内しており、郵送は不可としています。窓口の受付は平日の午前8時45分から正午、午後1時から午後5時までです(土日祝・年末年始を除く)。 許可の種類と許可権者の違いは農地法の3条・4条・5条をご覧ください。
何が在宅でできて、何が来庁を要するのか。 ここを先に分けておくと、休暇の取り方を計画できます。
平日に動けない、知識もない、という前提から
農地を相続したものの、自分は会社勤めをしている。役所の窓口は平日しか開いていない。農業の経験もなく、農地法という言葉も初めて聞いた——。
この状態から始める場合の順序を整理します。そして、この制約は工夫で回避できる部分と、そうでない部分に分かれます。まずそこを切り分けておくと、無理なく進められます。
自分で耕作しなくても保有できるのか
結論から言えば、相続によって農地を取得すること自体に、農業を行っていることは求められません。
農地を売買や贈与で取得する場合には、農地法第3条に基づく農業委員会の許可が必要で、買主には農作業への従事などの要件があります。しかし相続の場合は、この許可を受けて取得するものではありません。代わりに、農地法第3条の3に基づき、農地の所在地を管轄する農業委員会へ届出をする必要があります(農地法3条の3)。条文は「遅滞なく」とし、農林水産省は「相続発生日からおおむね10か月以内」、横浜市中央農業委員会は「相続の日から届出までの期日は特に定めはありません」と案内しています。この届出を正当な理由なく怠った場合や虚偽の届出をした場合には、10万円以下の過料の対象となります。
つまり、農業をしない会社員でも農地を相続することはできます。ただし、保有し続けることには管理の責任が伴います。
農地には農業委員会による利用状況調査が毎年行われており、耕作されていない、あるいは十分に利用されていないと判断された場合には、利用意向調査や農地中間管理機構との協議の勧告につながることがあります。農業振興地域内にある遊休農地のうち、勧告を受け翌年1月1日時点でも撤回されていないものについては、固定資産税の評価で用いる限界収益修正率0.55が適用されず、評価額が通常の農地と比べておよそ1.8倍になる仕組みです。
平日に動けない場合、どこまで進められるか

手続きには、平日に出向く必要があるものと、そうでないものがあります。
| 進め方 | 内容 |
|---|---|
| 手元の資料で確認できる | 名義、地番、地目、面積(固定資産税の課税明細書、権利証、登記事項証明書) |
| インターネットで調べられる | 区域区分、周辺の状況、農地の所在(自治体の地図情報、eMAFF農地ナビ) |
| 郵送で請求できる | 登記事項証明書、名寄帳・固定資産課税台帳(自治体により対応が異なります) |
| 電話で照会できる | 農業委員会への一次的な問い合わせ |
| 出向く必要が生じやすい | 現地の確認、境界の立会い、専門家との面談の一部 |
初期の状況把握は、郵送と電話とインターネットでかなりの範囲を進められます。 現地の確認が必要になるのは、境界、接道、残置物、草木の状態といった、資料からは分からない項目です。
登記事項証明書はオンラインで請求できます。 手数料は書面請求が1通600円、オンライン請求・送付が520円、オンライン請求・窓口交付が490円です。地図等証明書(公図など)はそれぞれ500円・470円・440円です(法務局「主な手数料一覧【令和7年4月1日~】」、2026年8月13日確認)。筆数が多い土地ではオンラインとの差が出ます。
来庁が必要になる場面
農地法3条の3の届出は、横浜市では窓口持参です。 横浜市中央農業委員会は次のように案内しています。
- 相続登記が完了してから、届出書・必要書類を農業委員会窓口へ持参して提出する
- 郵送は不可
- 対象は現況が農地のものに限る
- 窓口の受付時間は午前8時45分〜正午、午後1時〜午後5時(土日祝・年末年始を除く)
出典:横浜市中央農業委員会 FAQ(2026年8月13日確認)
管轄は農地の所在地で決まります。 中央農業委員会は鶴見・神奈川・保土ケ谷・旭・港北・緑・青葉・都筑の8区、それ以外の区は南西部農業委員会です。南西部管轄の農地については、提出方法を同委員会へご確認ください。
届出の詳細は農地を相続したら農業委員会へ届出が必要です(農地法3条の3)で整理しています。
農地の所在や地番は、農林水産省のeMAFF農地ナビで調べ始めることもできます。ただし、地図上の表示だけで判断はできません。
課税明細に載っていない農地がある場合があります
見落とされやすい点として、固定資産税の免税点があります。横浜市の場合、同一区内で同一の人が所有する土地の課税標準額の合計が30万円未満であれば、土地に対する固定資産税は課税されません。
課税されていない土地について、納税通知書からは把握できないことがあります。 通知書だけを見て「所有している不動産はこれで全部」と判断すると、抜けが残る可能性があります。相続登記の対象から漏れれば、過料のリスクもそのまま残ります。
確認の方法として、固定資産が所在する区の区役所税務課へ名寄帳や固定資産課税台帳を請求する方法があります。郵送に対応している場合もあるため、事前に窓口へご確認ください。
遠方に住んでいる場合
勤務地の都合で、農地から離れた場所に住んでいることがあります。この場合、現地に行くこと自体が大きな負担になります。
遠方から所有している場合の進め方、現地へ行かずにどこまで確認できるか、行く必要が生じるのはどのような場面かについては、遠方にお住まいで現地に行けない方へで詳しく整理しています。
最初の一歩は現況の把握
方針を決める前に、次の3点を確認します。
- 名義 — 登記上の所有者が誰か。横浜市中央農業委員会は、農地法3条の3の届出を相続登記の完了後に行うよう案内しています。相続登記は2024年4月1日から義務化されており、取得を知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がなければ10万円以下の過料の対象です
- 区域 — 市街化区域か市街化調整区域か、農用地区域に入っているか
- 現況 — 耕作されているか、荒れているか、接道はどうか
この3点が分かれば、使う・貸す・手放すのどれが現実的かが絞り込めます。農業を継がない立場で相続した場合の全体の進め方は農業をしない人が農地を相続したら何から始めるかで整理しています。
相続後に必要な手続きの全体像は農地を相続された方へをご覧ください。
まとめ
会社員が農地を相続すること自体に制度上の障害はありません。ただし、保有には管理の責任と、登記・届出という2つの期限のある手続きが伴います。
平日に動けないという制約は、初期の状況把握の段階では大きな障害になりません。まずは手元の資料から確認できることを確認し、現地に行く必要がある項目だけを後回しにする、という順序が現実的です。
平日に動けない方でも、資料をもとに進められます
お手元の課税明細書や権利証をご覧いただきながら、お電話でご相談いただけます。現在わかることと、次に確認すべきことを整理してお伝えします。
お電話でのご相談: 03-6869-4326(受付 平日10:00〜17:00)/フォームは24時間受付
本記事は制度の一般的な内容をご説明するものです。個別の手続きに何が必要かは、相続関係や土地の条件によって異なります。登記申請は司法書士、許認可申請は行政書士、税務は税理士がそれぞれ担当します。当サイトはこれらの手続きを代理するものではなく、必要に応じて各専門家をご紹介します。記載内容は2026年8月時点の情報に基づきます。
よくあるご質問
平日に休みが取れません。どこまで進められますか。
名義・地番・地目・面積の確認、区域区分の調査、登記事項証明書のオンライン請求までは在宅で進められます。現地の状態を確かめるには、土地へ足を運ぶ必要があります。農地法3条の3の届出について、横浜市中央農業委員会は窓口持参としています(提出方法は農業委員会によって異なることがあります)。
農業委員会への届出は郵送できますか。
横浜市中央農業委員会は郵送不可とし、窓口へ持参するよう案内しています。また相続登記が完了してからの提出とされています。
窓口は何時まで開いていますか。
横浜市中央農業委員会の受付時間は、午前8時45分から正午まで、および午後1時から午後5時までです(土日祝・年末年始を除く)。
登記事項証明書はいくらですか。
書面請求で1通600円、オンライン請求・送付で520円、オンライン請求・窓口交付で490円です(2026年8月時点)。
自分で耕作しなくても持ち続けられますか。
相続による取得自体は農地法3条の許可対象ではありません。ただし農地法2条の2は、農地について権利を有する者に農業上の適正かつ効率的な利用を確保する責務を定めています。
草刈りだけ外注できますか。
できます。現況写真と地番をお送りいただければ、面積が分からないままでもお見積りできます。農地・空き地の草刈りのご依頼をご覧ください。









