枯れ草の火災リスクと土地所有者の責任

枯れ草の火災リスクと土地所有者の責任

冬枯れの草を見て、もし火が付いたらと不安になっていませんか。枯れ草のある土地をお持ちの方に向けて、責任の枠組みと管理の進め方を整理しました。

枯れ草の火災について、横浜市火災予防条例は空地の所有者に「枯草等の燃焼のおそれのある物件の除去」を義務として課しています。 一方、火災が起きたときの損害賠償は、失火ノ責任ニ関スル法律により、重大な過失がない限り民法709条が適用されません。予防の義務と、賠償の責任は別の枠組みで定められています。

条例の側から見ていきます。努力目標ではなく、条文上は「講じなければならない」という書き方です。

空地の所有者、管理者又は占有者は、当該空地の枯草等の燃焼のおそれのある物件の除去その他火災予防上必要な措置を講じなければならない。

出典:横浜市火災予防条例30条1項(2026年8月13日確認)

同条2項は空家について別に定めています。 空家の所有者または管理者に、「当該空家への侵入の防止、周囲の燃焼のおそれのある物件の除去その他火災予防上必要な措置」を求める内容です。

目次

火元が自分でなくても、管理は求められます

条例が求めているのは、燃えやすい物件を除去することです。 誰が火をつけたかとは別の話です。たばこの投げ捨て、火遊び、放火など、外部から火が入る可能性があるためです。

たき火にも定めがあります。 同条例31条は「燃焼のおそれのある物件の近くにおいては、たき火その他の燃焼行為(以下「たき火等」という。)をしてはならない」とし、たき火等をする場合は「消火準備その他火災予防上必要な措置を講じ、監視しなければならない」としています。

刈草を現地で燃やして処分する方法は避けてください。 刈草の処分方法は刈った草の処分方法と費用の考え方で整理しています。

火災警報が出ている日の制限

火災警報が発せられている間は、火の使用が制限されます。

前項の規定による警報が発せられたときは、警報が解除されるまでの間、その市町村の区域内に在る者は、市町村条例で定める火の使用の制限に従わなければならない。

出典:消防法22条3項(2026年8月13日確認)

市町村長は、期間を限った制限もできます。 消防法23条は「市町村長は、火災の警戒上特に必要があると認めるときは、期間を限つて、一定区域内におけるたき火又は喫煙の制限をすることができる」としています。

横浜市は、乾燥注意報や強風注意報などが発表され、火災発生や延焼拡大のおそれが著しいと市長が認めるときに火災警報を発令すると案内しています。

責任の枠組み

失火の責任の枠組みを示した図。原則は失火ノ責任ニ関スル法律により民法709条の規定を失火の場合には適用しない。ただし重大な過失があった場合は同法ただし書によりこの限定が外れる

失火の場合、民事の責任は原則として限定されます。

民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス

出典:失火ノ責任ニ関スル法律(2026年8月13日確認)

ただし「重大ナル過失」があった場合は、この限定が外れます。 何が重大な過失に当たるかは、出火原因、火の扱い、管理の経緯、周辺状況などをもとにした個別の法的判断です。当サイトでは、個別の事案について責任の有無を判断できません。 火災後に見通しを確認したい場合は、消防による原因調査の情報を整理したうえで、弁護士へご相談ください。

刑事の定めは別にあります。

条文内容
刑法116条失火により108条の物、または他人所有の109条の物を焼損した者は50万円以下の罰金。109条(自己所有)・110条の物を焼損し公共の危険を生じさせた者も同様
刑法110条放火して前二条以外の物を焼損し公共の危険を生じさせた者は1年以上10年以下の拘禁刑(自己所有の場合は1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金)

出典:刑法(2026年8月13日確認)

管理の進め方

一度に全面を整えられない場合、どこから着手するかを業者と相談してください。 判断材料になるのは次の3点です。

観点見るところ
燃え広がる先住宅や道路との距離
燃えやすさ枯れ草の密集の度合い
火が入る経路外部から入りやすい場所か

どこを刈り、どこを残したかを記録しておいてください。 次回の依頼時に範囲を伝える材料になります。

刈った草を積んだままにすると、乾燥した可燃物がその場に残ります。 搬出するのか、どう処理するのかまで決めてから依頼してください。

投棄されやすい条件も確認します。 道路からごみを投げ込まれやすい場所、出入りが容易な場所、吸い殻が落ちている場所です。簡易な柵、火気厳禁の表示、定期巡回を組み合わせる方法がありますが、農作業の出入口や周辺の通行を妨げない配置にしてください。

横浜市は、私有地内の不法投棄物について、所有者・管理者の責任のもとで片付けると案内しています横浜市のFAQ、2026年8月13日確認)。刈草と一緒に処分できると決めつけず、業者と処理方法を相談してください。

草刈りの依頼先は草刈りを頼める業者の種類と向き不向き、費用の考え方は草刈り業者の料金相場と選び方で整理しています。

遠方に住んでいる場合

現地へ行く回数を増やすことだけが対策ではありません。

  1. 現況写真を同じ位置から撮る(変化を追える)
  2. 作業日と作業範囲を記録する
  3. 近隣や管理者から連絡を受けられる状態にしておく
  4. 家族内で固定資産税の通知書、地番、管理先を共有しておく

管理を委託する場合は、次を確認してください。 草を刈るだけか、刈草の処分、投棄物の扱い、写真報告、緊急時の連絡先まで含むか。境界が分かりにくい土地では、作業前に対象範囲を特定しておくことも必要です。

土地の一部を第三者へ貸している場合は、契約上の管理分担も確認してください。

煙や炎を見つけたとき

自分だけで消そうとせず、安全を確保して119番通報してください。

地番だけでは場所が伝わりにくいことがあります。 近くの道路、交差点、目印になる建物もあわせて伝えてください。

火災が収まった後は、消防や警察の確認を妨げないようにしてください。 現場を独断で片付ける前に、必要な記録を残します。

よくあるご質問

枯れ草を放置していると、何か義務違反になりますか。

横浜市火災予防条例30条1項は、空地の所有者・管理者・占有者に「当該空地の枯草等の燃焼のおそれのある物件の除去その他火災予防上必要な措置を講じなければならない」と定めています。自分の土地が同条の「空地」に当たるかを含め、扱いは消防局へご確認ください。

他人が火をつけた場合も所有者の責任になりますか。

個別の判断になります。失火ノ責任ニ関スル法律は、失火の場合に民法709条を適用しないとしたうえで、失火者に重大な過失があったときはこの限りでないとしています。何が重大な過失に当たるかは事案ごとの法的判断ですので、弁護士へご相談ください。

刈った草を現地で燃やしてもよいですか。

横浜市火災予防条例31条は「燃焼のおそれのある物件の近くにおいては、たき火その他の燃焼行為をしてはならない」としています。刈草の処分方法は搬出を含めて業者とご相談ください。

火災警報が出るとどうなりますか。

消防法22条3項により、警報が解除されるまでの間、その市町村の区域内にいる者は市町村条例で定める火の使用の制限に従うことになります。市町村長は、期間を限って一定区域内のたき火や喫煙を制限することもできます(同法23条)。

失火に刑事罰はありますか。

刑法116条は、失火により108条の物または他人所有の109条の物を焼損した者を50万円以下の罰金としています。109条(自己所有)・110条の物を焼損し公共の危険を生じさせた場合も同様です。

どこから刈ればよいですか。

住宅や道路に近い部分、枯れ草が密集する部分、外部から入りやすい部分を優先する考え方があります。一度に全面を整えられない場合も、どこを残したかを記録しておいてください。

ご依頼について

現況写真と地番をお送りいただければ、条件を確認したうえでご案内します。 農地・空き地の草刈りのご依頼から承ります。面積が分からないままでもお申し込みいただけます。

管理の負担全体は農地の草刈り・管理の負担を減らしたい方へで整理しています。

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この記事を書いた人

横浜市周辺の農地・市街化調整区域の土地について、国や自治体が公表している情報をもとに、所有者の方がまず確認すべきことを整理して発信しています。登記・許認可・測量・税務・売買の各手続きは、それぞれの分野の専門家と連携して進めます。

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