農地を売る・貸す・転用するのに、なぜ許可が要るのか。農地法の全体像をひととおり知りたい方に向けた記事です。
農地法は、農地の権利移動と転用を許可制にしている法律です。 許可は3条・4条・5条の3種類で、3条だけ許可権者が違い(3条は農業委員会、4条と5条は都道府県知事等。横浜市では市長)、違反すると3条・5条では行為が「効力を生じない」(権利が移らない)ほか、原状回復等の措置を命じられ、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象になります。
| 条 | 何をするとき | 許可を出すのは |
|---|---|---|
| 3条 | 農地を農地のまま権利移動する(売買・貸借) | 農業委員会 |
| 4条 | 自分の農地を自分で転用する | 都道府県知事等(横浜市は市長) |
| 5条 | 転用目的で権利移動する | 都道府県知事等(横浜市は市長) |
そして、3条・5条については、許可を受けずにした行為は「効力を生じない」と条文に書かれています。 権利が移らないという意味です。後述します。
農地法が何を規制しているか
1条が目的を定めています。
この法律は、国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源であることにかんがみ、耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ、農地を農地以外のものにすることを規制するとともに、農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し、及び農地の利用関係を調整し、並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより、耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、もつて国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。
出典:農地法1条(2026年8月14日確認)
「農地を農地以外のものにすることを規制する」と「権利の取得を促進する」が併記されています。 転用を止めるだけの法律ではなく、農地を使う人へ渡すことも目的に含まれています。
「農地」の定義は現況で決まります
この法律で「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいい、「採草放牧地」とは、農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるものをいう。
出典:農地法2条1項
農地法上の「農地」は、登記の地目ではなく現況で判断されます。 登記が「畑」でも耕作していなければ扱いが変わることがあり、逆に登記が「雑種地」でも耕作していれば農地として扱われることがあります。現況主義の詳細は農地転用とは。手続きの全体像と4条・5条の違いで整理しています。
3条:農地のまま権利を動かすとき
売買や貸借で権利が動くけれど、農地のまま使い続ける場合です。
農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合及び第五条第一項本文に規定する場合は、この限りでない。
出典:農地法3条1項 用語の意味とよくある勘違いは農地法をわかりやすくで整理しています。 どれに当たるかの判定は農地法3条・4条・5条はどれに当たるかで整理しています。
押さえる点は3つです。
- 許可権者は農業委員会(4条・5条とは違う)
- 「当事者が」許可を受ける — 売主・買主の双方が申請します
- 所有権の移転だけでなく、賃借権・使用貸借権の設定も対象
実際に権利が設定されている農地は多くありません。 当サイトがeMAFF農地ナビの公表データを集計したところ、横浜市の農地32,259筆のうち賃借権等の設定がないものが93.2%(30,070筆)でした。内訳は賃借権1,575筆、使用貸借権611筆、地上権3筆です(2026年8月13日取得。市街化区域内の農地は非公表のため含まれません)。この集計の全体は横浜市の農地データで公開しています。
貸したいときの実務は農地を貸したい方へ、相続で取得したときの届出(3条の3)は農地を相続したら農業委員会へ届出が必要ですで整理しています。相続は許可を受けて取得するものではないため、3条の許可ではなく届出になります。
4条と5条:転用するとき
4条と5条の違いは、権利が動くかどうかです。
| 4条 | 5条 | |
|---|---|---|
| 場面 | 自分の農地を自分で転用する | 転用目的で売る・貸す |
| 権利の移動 | なし | あり |
5条の条文は次のとおりです。
農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。次項及び第四項において同じ。)にするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
出典:農地法5条1項
5条は「3条第1項本文に掲げる権利」を引いています。 動く権利の種類は3条と同じで、目的が転用かどうかで条が分かれる構造です。
4条と5条の詳しい使い分けは農地転用とは。手続きの全体像と4条・5条の違い、手順と期間は農地を転用したい方へをご覧ください。
横浜市では、4条・5条の許可権者は市長です
神奈川県内で農地転用の許可権限を持つ指定市町村は横浜市だけです。 農林水産省の一覧では、指定の効力が生じた日は平成28年11月1日とされています。
市街化区域内かどうかで手続きが変わります。
| 場所 | 4条・5条の手続き |
|---|---|
| 市街化区域内 | 届出 |
| 市街化調整区域内 | 許可(許可権者は市長) |
3条は場所によらず農業委員会の許可です。 ここが混同されやすい点です。
3条・5条では、無許可でした行為は「効力を生じない」
罰則とは別に、私法上の効果が定められています。
第一項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない。
出典:農地法3条6項(5条3項が準用)
契約書を交わしても、代金を払っても、許可がなければ権利は移りません。 5条の場合は、同条3項がこの規定を準用しています。
この無効の定めは3条と5条のものです。 4条は自分の農地を自分で転用する場合であり、権利の移動を伴いません。無許可の4条転用については、次に述べる原状回復等の措置と罰則が働きます。
原状回復を命じられることがあります
農地法51条は、違反転用者等に対する措置を定めています。
都道府県知事等は、〔中略〕第四条若しくは第五条の規定によつてした許可を取り消し、その条件を変更し、若しくは新たに条件を付し、又は工事その他の行為の停止を命じ、若しくは相当の期限を定めて原状回復その他違反を是正するため必要な措置(以下この条において「原状回復等の措置」という。)を講ずべきことを命ずることができる。
命令に従わない場合、公表されることがあります。
都道府県知事等は、第一項の規定により原状回復等の措置を講ずべきことを命ぜられた違反転用者等が、当該命令に係る期限までに正当な理由がなくて当該命令に従わなかつたときは、その旨及び当該命令に係る土地の地番その他必要な事項を公表することができる。
出典:農地法51条1項・3項
行政が自ら措置を講じ、その費用を負担させることもできます(同条4項〜6項。徴収については行政代執行法5条・6条を準用)。
罰則

| 対象 | 内容 |
|---|---|
| 3条1項・4条1項・5条1項に違反した者 | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科ではなく選択) |
| 不正の手段で許可を受けた者 | 同上 |
| 51条1項の命令に違反した者 | 同上 |
| 法人の従業者等が4条1項・5条1項に係る違反行為をしたとき | 両罰規定により、その法人に1億円以下の罰金刑 |
出典:農地法64条・67条(2026年8月14日確認)
条文は「拘禁刑」です。 刑法改正により懲役・禁錮が拘禁刑に一本化されています。
違反転用の実際の流れは農地転用でよくあるトラブルと、その前に確認することで整理しています。
よくあるご質問
農地法の許可は何種類ありますか。
3条・4条・5条の3種類です。3条は農地を農地のまま権利移動する場合、4条は自分の農地を自分で転用する場合、5条は転用目的で権利移動する場合です。
3条と5条はどう違いますか。
転用するかどうかです。どちらも権利が動きますが、農地のまま使うなら3条、農地以外にする目的なら5条になります。5条の条文は「第三条第一項本文に掲げる権利」を引いており、動く権利の種類は同じです。
許可を出すのは誰ですか。
3条は農業委員会、4条・5条は都道府県知事等です。横浜市は農地転用許可権限に係る指定市町村であり、4条・5条の許可権者は市長です。3条は場所によらず農業委員会の許可になります。
許可を受けずに売買したらどうなりますか。
農地法3条6項は「第一項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない」と定めています。5条の場合は同条3項がこの規定を準用しています。契約書を交わしても権利は移りません。なお、この無効の定めは3条と5条のもので、権利の移動を伴わない4条には及びません。
無許可で転用した場合の罰則は。
農地法64条は、3条1項・4条1項・5条1項に違反した者を3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金としています。法人の従業者等が4条1項・5条1項に係る違反行為をしたときは、両罰規定により法人に1億円以下の罰金刑が科されます(67条)。
「農地」かどうかは登記で決まりますか。
いいえ。農地法2条1項は「耕作の目的に供される土地」と定めており、現況で判断されます。登記の地目とは別です。
ご相談について
どの条の手続きになるかは、その土地をどうしたいかで決まります。 農地のまま貸すのか、転用するのか、転用したうえで売るのかで、申請先も期間も変わります。
地番と現況写真をお送りいただければ、確認すべき窓口と順序を整理します。無料の一次診断からお申し込みいただけます。









