農地を貸したいときの選択肢と手順

農地を貸したいときの選択肢と手順

使っていない農地を、誰かに使ってもらえないだろうか。農地を貸したいと考え始めた方に向けて、方法と手順を整理しました。

農地を農地のまま貸す方法は、大きく2つあります。 農地バンク(農地中間管理機構)の農用地利用集積等促進計画による方法と、農地法3条の許可による方法です。2025年4月からは前者が中心となっています。 どの条の手続きになるかは農地法とは|3条・4条・5条の違いをご覧ください。 はじめて調べる方は農地法をわかりやすく|なぜ許可が要るのかをご覧ください。 3類型の判定表とケース別の当てはめは農地法3条・4条・5条をご覧ください。

どちらの場合も、借り手の側に要件があります。 農地法3条の許可による場合、同条2項1号は、取得後にその農地の全てを効率的に利用して耕作等の事業を行うと認められない場合には許可できないとし、同項4号は必要な農作業に常時従事すると認められない場合も許可できないとしています。

誰にでも貸せるわけではない、というのが出発点です。

参考までに、eMAFF農地ナビに公表されている横浜市の農地32,259筆のうち、賃借権等の設定がないものが93.2%でした(2026年8月13日取得。市街化区域内の農地は非公表のため含まれません)。賃借権は1,575筆、使用貸借権は611筆、地上権は3筆です。 区別の筆数や地目の内訳は横浜市の農地データをご覧ください。

目次

農地を貸す方法は利用目的で分かれる

農地を貸す方法は、大きく「農地のまま耕作してもらう」と「農地転用後に農業以外の用途で貸す」に分かれます。どちらを選ぶかで、必要な手続と確認事項が変わります。

農地を貸す2つの方法の比較図。農地のまま耕作してもらう場合は農地バンク(農地中間管理機構)が主な窓口で借り手が農地を適切に利用できるかを確認、転用して農業以外の用途で貸す場合は農業委員会が窓口で都市計画法・建築基準法・条例も確認する

農地のまま貸す場合は、借り手が農地を適切に利用できるかを農地制度に沿って確認します。口約束で耕作を任せると、契約期間、賃料、草刈り、返還時の状態が曖昧になります。親族や近隣農家が相手でも、正式な手続と書面を整えます。

駐車場や資材置場など農業以外の用途で貸す場合は、先に農地転用が可能かを確認します。転用手続を経ず、実際の利用だけを変えることはできません。

農地のまま貸すなら農地バンクを確認する

農地中間管理機構、通称「農地バンク」は、都道府県知事が指定する公的な中間的受け皿です。所有者などから農地を借り受け、地域計画に位置付けられた担い手などへ貸し付け、農地の集積・集約化を進めます。

制度改正により、2025年4月から農地の貸借は原則として農地バンク経由となりました。農地バンクが作成する農用地利用集積等促進計画による方法が中心です。一方、農地法第3条の許可による貸借など、制度上の別の方法もあります。土地と借り手の条件に応じ、農業委員会や農地バンクへ確認します。

農地バンクは、どの土地でも自動的に借り受け、借り手を付ける仕組みではありません。地域計画、農地のまとまり、耕作条件、受け手の見込みなどが関係します。

転用して貸す場合は二つの制度を見る

舗装された土地。コンクリートで舗装された敷地の奥に建物が見える
転用して貸す場合の例。用途に応じた舗装や設備が必要になります(写真提供:株式会社メイクリーン)

農地を駐車場、資材置場、事業用地などに変えて貸す場合は、農地法上の転用許可・届出を確認します。同時に、都市計画法、建築基準法、条例など予定用途に関する制度も確認します。

特に市街化調整区域の土地活用では、市街化を抑制する区域という性格から、建築や開発が制限されます。農地転用の見込みがあることと、予定する建物や土地利用が認められることは同じではありません。

転用前に借り手と条件を固めすぎると、許可や造成条件が合わず計画を見直すことがあります。地番、区域区分、農地区分、接道、排水、既存利用を先に調べます。

発電事業者へ貸す場合の手続は農地の太陽光発電に必要な許可と要件で整理しています。

貸す前に確認する五つの事項

  1. 登記名義と貸主の権限 — 名義が親や祖父母のままなら、まず名義の整理が要ります。共有名義の場合は下記のとおり期間の制限があります
  2. 土地の範囲 — 複数筆、進入路、水路を公図と現地で照合します
  3. 現在の利用者 — 近隣の人が無償で耕作している場合も、利用の経緯を確認します
  4. 農地の状態 — 雑草、残置物、土壌、給排水、農業機械の進入条件を見ます
  5. 継続的な負担 — 固定資産税や土地改良区などを整理します

1は先に片づけておいてください。 名義が親や祖父母のままであれば、農地の相続で名義変更(相続登記)を進める手順をご覧ください。

共有名義の農地は、貸せる期間に制限があります

民法252条1項により、共有物の管理に関する事項は各共有者の持分の価格に従いその過半数で決するとされています。そのうえで同条4項は、この方法で設定できる賃借権等の期間を次のとおり定めています。

対象期間
樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等10年
前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等5年
建物の賃借権等3年
動産の賃借権等6か月

農地は「前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等」に当たり、5年が上限です。 これを超える期間で貸す場合、持分の過半数では足りません。

なお民法251条1項により、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)を加えるには、他の共有者の同意が必要です。転用して貸す場合は、この点も関係します。

共有名義の整理は共有名義の農地で起きる問題と整理の進め方をご覧ください。

契約では、期間、賃料、更新、草刈り、農業用施設、原状回復、途中解約を明確にします。農地法上の許可や計画が必要な場合は、契約の効力との関係も専門家へ確認してください。

相談先を使い分ける

農地のまま貸す制度は、農業委員会、自治体の農政担当、農地バンクへ相談します。農地転用の申請書類作成を依頼する場合は行政書士、登記は司法書士、境界は土地家屋調査士が専門領域です。

転用後の土地について借主募集や賃貸借取引が必要な場合、当相談室は宅地建物取引業の取引には関与せず、提携する宅地建物取引業者へおつなぎします。土地の条件が分からない段階では、まず制度上の選択肢を絞ります。

農地のまま貸すか、転用可能性を調べるか迷う方は、地番と現況をもとに無料一次診断をご利用ください。借り手を探す前に、所有者側の希望も具体化します。将来家族が使う予定があるのか、どの程度の期間なら貸せるのか、農業用施設の設置を認めるのかを整理します。貸借期間中に相続が起きる可能性も考え、契約書と連絡先を家族が確認できる場所に保管します。

農地を貸している間も、所有権が借り手へ移るわけではありません。一方で、契約期間中は所有者の都合だけで直ちに返還を求められるとは限りません。農地法には賃貸借の解約等に関する規制もあるため、期間と終了条件を軽く決めないことが大切です。

よくあるご質問

農地を貸すのに許可は要りますか。

方法によります。農地バンクの農用地利用集積等促進計画による方法と、農地法3条の許可による方法があり、2025年4月からは前者が中心となっています。どちらによるかは農業委員会または農地バンクへご確認ください。

誰にでも貸せますか。

貸せません。農地法3条2項1号は、取得後にその農地の全てを効率的に利用して耕作等の事業を行うと認められない場合には許可できないとしています。同項4号では、必要な農作業に常時従事すると認められない場合も許可できないとされています。

農地バンクに出せば借り手が見つかりますか。

どの土地でも自動的に借り受け、借り手を付ける仕組みではありません。地域計画、農地のまとまり、耕作条件、受け手の見込みが関係します。断られた場合は農地バンク・JAで対応してもらえなかった土地はどうするかをご覧ください。

近所の人に無償で耕してもらっています。これでよいですか。

利用の経緯と現在の権利関係を確認してください。口約束では、契約期間、賃料、草刈り、返還時の状態が曖昧になります。

貸したら返してもらえなくなりますか。

所有権が移るわけではありません。ただし契約期間中は所有者の都合だけで直ちに返還を求められるとは限らず、農地法には賃貸借の解約等に関する規制もあります。期間と終了条件を契約時に確認してください。

共有名義の農地を貸せますか。

貸せますが、期間に制限があります。民法252条4項により、持分の価格の過半数で決する方法で設定できる土地の賃借権等は5年が上限です。これを超える場合や、転用を伴う変更を加える場合は、共有者の同意が関係します。

駐車場として貸せますか。

農地以外の用途で貸す場合は、先に農地転用が可能かを確認します。転用手続きを経ず利用だけを変えることはできません。農地を駐車場・資材置き場・太陽光にできるかをご覧ください。

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この記事を書いた人

横浜市周辺の農地・市街化調整区域の土地について、国や自治体が公表している情報をもとに、所有者の方がまず確認すべきことを整理して発信しています。登記・許認可・測量・税務・売買の各手続きは、それぞれの分野の専門家と連携して進めます。

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