農地に太陽光発電は設置できるのか

農地に太陽光発電は設置できるのか

使っていない農地に太陽光パネルを置けないだろうか、と考えたことはありませんか。設置できる条件を知りたい方に向けた記事です。

農地に太陽光発電設備を設置することは、制度上は可能です。ただし方式が2つに分かれ、どちらも農地法の手続が要ります(市街化調整区域など市街化区域外の農地は許可、市街化区域内の農地は農業委員会への届出です)。加えて2026年度から2027年度にかけて、売電の前提となる国の買取制度が大きく変わります。使っていない農地の活用先として太陽光を検討されている方に向けて、判断の分かれ目を順に整理します。

目次

農地に太陽光を置く方法は2つに分かれます

農地に太陽光発電設備を設置する方法は、農業をやめて土地全体を発電設備の敷地にする「全面転用型(野立て)」と、営農を続けながら支柱を立てて上部空間に設備を置く「営農型(ソーラーシェアリング)」の2つです。

以下は2026年8月10日時点の制度にもとづく整理です。

農地に太陽光を置く2つの方法の比較図。全面転用型(野立て)は農業をやめて農地転用の許可を受け毎年の義務なしで許可件数の約94%、営農型(ソーラーシェアリング)は農業の継続が前提で支柱部分の一時転用許可を受け栽培実績と収支の報告が必要で約6%
全面転用型(野立て)営農型(ソーラーシェアリング)
農業の継続やめる続けることが前提
農地法の手続農地転用の許可(自分で設置するなら4条、貸す・売るなら5条)支柱部分の一時転用許可
市街化区域内の農地の場合許可ではなく農業委員会への届出同左
転用の性格農地としての利用を終える期間を区切った一時的な転用
毎年の義務なし栽培実績と収支の報告
許可後の縛り転用後の用途に沿った利用営農が続かなければ設備の撤去を求められる

農林水産省は営農型太陽光発電を「一時転用許可を受け、農地に簡易な構造でかつ容易に撤去できる支柱を立てて、上部空間に太陽光を電気に変換する設備(以下「営農型太陽光発電設備」という。)を設置し、営農を継続しながら発電を行う事業」と定義しています(営農型太陽光発電に係る農地転用許可制度上の取扱いに関するガイドライン、令和6年3月25日)。

農地転用の手続そのものの全体像は農地転用とは。手続きの全体像と4条・5条の違いで整理しています。

実際の許可の9割以上は「農業をやめる」方式です

記事や広告ではソーラーシェアリングが大きく取り上げられますが、実際の許可件数の内訳は逆です。

農林水産省の集計によると、太陽光発電設備を設置するための農地転用許可は、平成23年度から令和5年度までの累計で104,060件・16,302.3haです。このうち農地全体を転用する方式(営農を廃止するもの)が97,923件、営農を継続する営農型が6,137件でした(太陽光発電設備を設置するための農地転用許可実績、農村計画課調べ、令和5年度末時点)。

件数でみると、許可の約94%が農業をやめる方式ということになります。営農型は約6%です。営農を続けながら発電するという形が制度としては用意されているものの、実際に選ばれている数は多くありません。

なお、この数字は「農地に太陽光を置いた所有者の94%が農業をやめた」という意味ではなく、許可件数の内訳です。1件あたりの面積も方式によって異なります。

2027年度以降、地上設置の太陽光は国の買取制度の支援対象から外れます

農地の活用先として太陽光発電を検討するとき、2026年時点で最も大きな変化は、国の買取制度そのものが地上設置の太陽光を支援対象から外すことです。

経済産業省は2026年3月19日、FIT制度・FIP制度における2026年度以降の買取価格等を公表しました。その中に次の一文があります。

※ 2027年度以降は、事業用太陽光発電(地上設置)はFIT/FIP制度における支援の対象外となります。

出典:経済産業省 報道発表(2026年3月19日)

入札対象となる区分についても、2027年度以降は支援の対象外とされています。

2026年度(令和8年度)の買取価格は、事業用太陽光発電(地上設置)のうち10kW以上50kW未満が9.9円/kWh、50kW以上(入札対象外)が9.6円/kWhです(2026年3月19日公表)。

農地に設置する野立ての太陽光発電は、この「事業用太陽光発電(地上設置)」に当たります。つまり、FIT/FIP制度による買取を前提とした収支の組み立ては、2027年度以降に認定を受ける案件ではできなくなります。すでに認定を受けている案件の扱いとは別の話です。

インターネット上には「初期費用は10年程度で回収できる」といった収支の試算が今も残っています。試算を見るときは、それが何年度の買取価格を前提にしたものかをご確認ください。前提の年度が古いまま残っている記事が少なくありません。

設置できるかどうかは、農地区分でおおむね決まります

「うちの農地に置けるのか」という問いに対して、最初に効いてくるのが農地区分です。農地は立地条件によって区分され、区分ごとに転用許可の方針が定められています。横浜市の審査基準では次のように整理されています。

以下は横浜市が2024年4月9日付で公開している審査基準にもとづくものです(2026年8月10日確認)。

農地区分転用許可の方針
農用地区域内農地原則として許可しない(例外的に許可できる場合がある)
甲種農地原則として許可しない(同上)
第1種農地原則として許可しない(同上)
第2種農地周辺の他の土地で目的を達成できると認められる場合は、原則として許可することができない
第3種農地原則として許可する

出典:横浜市「農地の転用の許可(第4条)審査基準」(2026年8月10日確認)

同じ審査基準には、第1種農地の要件に該当する場合であっても、第3種農地または第2種農地の要件に該当するものは第3種農地または第2種農地として区分される、という定めもあります。地図の上で「農地」に見えていても、区分は周辺の市街化の状況で変わります。

区分を調べる順序

区分は書類の上に書かれているものではないため、次の順で確認していくことになります。

  1. 登記事項証明書と公図で、地番・地目・面積・所有者を確定する
  2. 市区町村の都市計画担当窓口で、市街化区域か市街化調整区域かを確認する
  3. 農業委員会または市町村の農政担当窓口で、農用地区域(いわゆる青地)に入っているかを確認する
  4. 同じ窓口で、農地区分がどれに当たるかの見込みを相談する
  5. 区分の見込みが立ってから、発電事業者や施工業者に相談する 青地・白地の違いと除外の要件は農地の「青地」「白地」とはで整理しています。

順序が逆になると手戻りが大きくなります。区分の見込みが立たないうちに設備の契約や造成を進めると、許可が下りなかったときに費用だけが残ります。許可が下りにくい土地の条件については農地転用できない土地とは【許可がおりないケース】で整理しています。

申請はどこへ出すのか

農地転用の許可申請は、農地のある地域を管轄する農業委員会へ提出します。横浜市の場合、市内は横浜市中央農業委員会(鶴見・神奈川・保土ケ谷・旭・港北・緑・青葉・都筑)と横浜市南西部農業委員会(西・中・南・港南・磯子・金沢・戸塚・栄・泉・瀬谷)の2つに分かれています。

横浜市は、市街化調整区域内の農地の転用について次のように案内しています。

農業委員会は、許可申請を受けたときは農地転用許可基準(立地基準・一般基準)に照らして判断した意見を添えて、許可権者である横浜市長(担当部署:みどり環境局農政推進課)へ書類を送付します

農業委員会から書類受領後、横浜市が申請内容を審査し、許可・不許可処分の決定をします

申請書を出す先と、許可を出す人が別である点に注意が必要です。市街化区域内の農地であれば、許可ではなく農業委員会への届出になります。

申請にあたっては、管轄の農業委員会との事前相談が必要とされています。営農型の場合は、通常の書類に加えて次のような添付が求められます。設備の設計図、下部の農地の栽培計画と収支の見込みを記載した営農計画書、営農への影響の見込みとその根拠となる書類、撤去費用を設置者が負担することを証する書面、そして毎年の報告を提出する旨の誓約書です。

出典:横浜市「農地の転用」(2026年8月10日確認)

申請から許可までの一般的な流れと、4条・5条の使い分けは農地転用とは。手続きの全体像と4条・5条の違いで整理しています。

市街化調整区域の農地では、農地法と都市計画法の両方を見ます

市街化調整区域の農地をお持ちの場合、確認する法律が2つになります。

ひとつは農地法です。横浜市の審査基準では、甲種農地は、第1種農地の要件に該当する農地のうち市街化調整区域内にある特に良好な営農条件を備えた農地とされ、原則として許可しないものと定められています。市街化調整区域にあること自体が、農地区分の上で不利に働く場合があります。

もうひとつが都市計画法です。ここは意外に思われることが多い点ですが、太陽光発電設備そのものは、多くの場合に開発許可の対象になりません。国土交通省の開発許可制度運用指針は「太陽光発電設備及びその付属施設が建築基準法第2条第1項に定める建築物でない場合は開発許可は不要である」としています(条項の表記は原文のまま引用しています)。付属施設についても、用途・規模・配置や発電設備との不可分性等から主として付属施設の建築を目的とした開発行為に当たらないと開発許可権者が判断した場合は、開発許可は不要とされています。

では太陽光発電設備が建築物に当たるのはどんなときか。農地に支柱を立てて設置する形については、国土交通省が平成26年1月28日の技術的助言(国住指第3762号)で整理しています。農地法4条1項または5条1項の許可(市街化区域内の農地は農業委員会への届出)を受けた支柱のうち、次に該当するものは建築基準法第2条第1号の建築物に該当しないとされています。 農地法そのものの仕組みは農地法の許可は3種類で整理しています。

  • 特定の者が使用する営農を継続する農地に設けるものであること
  • 支柱及び太陽光発電設備からなる空間には壁を設けず、かつ、太陽光発電設備のパネルの角度、間隔等からみて農作物の生育に適した日照量を保つための設計となっていること

出典:国土交通省「農地に支柱を立てて設置する太陽光発電設備の建築基準法上の取扱いについて」(2026年8月10日確認)

整理すると、市街化調整区域の農地で行き止まりになりやすいのは都市計画法の側ではなく、農地法の側です。管理棟や倉庫のような建築物を伴う計画であれば都市計画法の手続も関わってきますが、パネルと架台だけの計画であれば、まず農地転用の可否が焦点になります。

市街化調整区域の土地全般の考え方は市街化調整区域の農地をお持ちの方へで整理しています。

営農型(ソーラーシェアリング)では何が求められるのか

営農型は「農業を続けながら発電もできる」と紹介されることが多い方式ですが、制度上は継続的な義務が伴います。2024年(令和6年)4月1日に、それまで通知で定められていた許可基準がガイドラインとして整理され、あわせて農地法施行規則にも定義と添付書類が明記されました(令和6年3月4日 農林水産省令第9号)。旧通知は廃止されています。

許可される期間は区分によって3年以内と10年以内に分かれます

ガイドラインの別表では、一時転用許可の期間が次のように区分されています。

区分期間
担い手が、自ら所有する農地または賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を有する農地等を利用する場合10年以内
遊休農地を再生利用する場合10年以内
第2種農地または第3種農地を利用する場合10年以内
上記以外の場合3年以内

農業をしていない所有者が、担い手にも当たらず、農地の区分が農用地区域内農地・甲種農地・第1種農地のいずれかという場合、期間は3年以内になります。期間が満了する場合には、それまでの営農の状況を勘案したうえで、再度の一時転用許可を行うことができるものとされています。裏を返せば、営農が続いていなければ更新できない可能性があります。

「営農が続いている」と認められる基準があります

ガイドラインは、下部の農地における営農の適切な継続が認められることを許可基準としたうえで、次に該当する場合は営農の適切な継続に当たらないとしています。

下部の農地において栽培する農作物の単収が、同じ年産の当該申請に係る農地が所在する市町村の区域内の平均的な単収と比較しておおむね2割以上減少する場合(遊休農地を再生利用する場合〔中略〕を除く。)

(当該市町村の区域内で作付けされていない農作物又は生産に時間を要する農作物を栽培する場合にあっては、〔中略〕書類に記載された単収より減少する場合。)

つまり、パネルの下で作物を作っていればよいのではなく、比較の基準となる収量に対して、おおむね2割以上落とさないことが求められます。基準は原則として同じ市町村の平均的な単収ですが、その市町村で作付けされていない作物や生産に時間を要する作物を選ぶ場合は、申請時に提出した書類に記載した単収が基準になります。

このほか、支柱の高さについては、原則として最低地上高2メートル以上を確保していることが求められています。農業機械を使い、人が立って作業できる高さという趣旨です。ただしガイドラインには、農地に垂直に太陽光発電設備を設置するものなど、設備の構造上、支柱の高さが下部の農地の営農条件に影響しないことが明らかである場合には、2メートルに達しなくても差し支えないとする例外も置かれています。

毎年の報告が続きます

一時転用許可を受けた人は、毎年、栽培実績及び収支の状況を翌年2月末日までに農地転用許可権者へ報告することとされています。栽培実績については、必要な知見を有する者の確認を受けることが許可条件として付されます。

申請の段階でも、設計図、栽培計画と収支の見込みを記載した営農計画書、営農への影響の見込みとその根拠となる書類、撤去費用を設置者が負担することを証する書面、毎年の報告を提出する旨の誓約書などの添付が求められます。

支柱部分と下部の農地面積の合計が30アールを超える場合は都道府県農業委員会ネットワーク機構への意見聴取が適当とされ、4ヘクタールを超える場合は許可権者が地方農政局等へ相談することが望ましいとされています。規模が大きくなるほど審査に関わる主体が増えます。

営農型は、発電設備を置いたあとも農業が続くことを前提にした制度です。ご自身で耕作を続ける予定がない場合、この方式は選びにくくなります。

補助金は使えるのか

農地の太陽光発電に使える補助制度はありますが、「農地を持っている個人が、設備の費用の補助を受ける」という形のものは見当たりません。 2026年8月10日時点で確認できた制度は次のとおりです。金額・公募期間はいずれもこの時点のものです。

国の制度は、地域の協議会が対象です

農林水産省に「みどりの食料システム戦略推進交付金のうち地域循環型エネルギーシステム構築のうち営農型太陽光発電のモデル的取組支援」(令和8年度当初予算)があります。同省はこれを「地域ぐるみの話合いによって、適切な営農と発電を両立する営農型太陽光発電のモデルを策定し、導入実証を行う取組を支援します」と説明しています。補助率は「定額、2分の1以内」とされていますが、対象者は「協議会等」です。公募時期は各都道府県の事業窓口へ問い合わせる形になっています。

同省は整備事業について、「地域循環型エネルギーシステム構築(整備事業)において、営農型太陽光発電設備を導入できるのは、過年度に当事業を活用してモデルを策定した地域のみとなります」とも案内しています。これから取り組む地域は、設備の導入ではなく計画策定や体制整備の側から入ることになります。

環境省系の「地域共生型太陽光発電設備導入事業」には営農地を対象とする区分がありますが、2026年度は一次公募・二次公募とも終了しています(二次公募は令和8年7月17日正午まで)。

神奈川県・横浜市の制度は、自家消費が要件です

制度対象者主な要件補助・助成額
令和8年度神奈川県自家消費型再生可能エネルギー導入費補助金法人または青色申告を行っている個人事業者県内の特定の施設へ供給する自家消費型。FIT・FIPの認定を受けない設備に限る。太陽光は発電出力10kW以上発電出力1kW当たり8万円(かながわ脱炭素チャレンジ中小企業認証制度の認証を受けた場合は2万円上乗せ)
横浜市太陽光発電導入支援助成金(令和8年度)横浜市内の中小企業者自家消費型であること太陽光のみで1kW当たり8万円・上限400万円/蓄電システムと同時導入で1kW当たり10万円・上限500万円

出典:神奈川県「令和8年度神奈川県自家消費型再生可能エネルギー導入費補助金」横浜市「太陽光発電導入支援助成金」(いずれも2026年8月10日確認)

神奈川県の制度には「自家消費型再生可能エネルギー発電設備を設置するソーラーシェアリングも補助対象となります」と明記されています。営農型は補助の対象になり得ます。

一方で横浜市の制度は「太陽光発電設備は自家消費型であることを条件としており、売電を目的とした設備は対象となりません」としています。神奈川県の制度も「FIT(固定価格買取制度)及びFIP(Feed-inPremium)の認定を受けない設備に限ります」という条件です。

つまり、売電を目的とした野立ての太陽光発電は、県・市いずれの要件からも外れます。 発電した電気をご自身の事業で使う形であれば検討の余地がありますが、農地を所有しているだけでは対象者の要件(法人または青色申告を行っている個人事業者/市内の中小企業者)にも当てはまりません。

なお横浜市の制度は、交付申請の前に「脱炭素取組宣言」と担当局との協議を行う流れになっています。申請できる時期だけでなく、事前の準備に必要な期間も見ておく必要があります。

補助制度は年度ごとに内容・予算・公募期間が変わります。ご検討の際は、その時点の募集要項をご確認ください。

自分で発電事業をしない場合、どんな関わり方があるか

農地の所有者が自分で設備を持ち、自分で発電事業を行うという形は、相続で農地を引き継いだ方や遠方にお住まいの方にとって現実的な選択とは限りません。まとまった設備投資に加えて、20年単位の維持管理と、営農型であれば毎年の報告が伴うためです。太陽光発電の解説記事の多くは、所有者が自ら発電事業を行う前提で書かれています。

自分では事業をしない場合、土地の側で考えられる関わり方は次のとおりです。

発電事業者へ貸す、または売る(全面転用型)

農地を発電事業者に貸したり売ったりして、事業者が転用して設備を設置する場合、農地法5条の許可の対象になります。5条の許可は、原則として所有者と転用事業者の共同申請です。所有者が単独で進められる手続ではなく、相手方が決まっていることが前提になります。

農地を貸すという方向全般については農地を貸したいときの選択肢と手順で整理しています。

営農型で、設置者と営農者を分ける

営農型で設備を設置する人と農業を行う人が異なる場合について、ガイドラインは次のように定めています。

設置者と営農者が異なる場合には、支柱に係る一時転用許可と下部の農地に民法(明治29 年法律第89 号)第269 条の2第1項の地上権又はこれと内容を同じくするその他の権利を設定するための法第3条第1項の許可を受けることが必要である。

権利を設定する期間は支柱の一時転用期間と同じ期間とし、一時転用許可と同時に設定するものとされています。支柱の一時転用許可だけでは足りず、農地法3条の許可も要るという構造です。手続は一段複雑になります。

そして、この方式でも下部の農地では誰かが営農を続けます。所有者が耕作しないのであれば、耕作する人を確保できるかが前提になります。

地代や条件の水準について

太陽光発電用地としての農地の賃料水準を示す公的な統計は、確認できませんでした。農林水産省の「農地の権利移動・借賃等調査」は農地法等にもとづく権利の設定・移動や転用の状況を対象としたもので、太陽光発電用途の賃借料という区分は見当たりません。農地中間管理機構(農地バンク)も、農業経営の規模拡大などのために農地を貸し付ける仕組みであり、発電用地の賃料を公表しているわけではありません。

参考になるのは、農林水産省が公表している営農型太陽光発電の事例です。令和8年1月公表の資料に、地権者が受け取る地代の実額が3件掲載されています(いずれも同資料の掲載時点の契約条件です)。

所在発電設備下部の農地地代営農協力金
神奈川県相模原市70アール(ブルーベリー・ブドウ)14万円/年なし
茨城県神栖市6アール(甘藷)5万円/年記載なし
千葉県千葉市13アール(水稲)15,000円/10アール・年10万円/10アール・年

出典:農林水産省「営農型太陽光発電について(令和8年1月)」(2026年8月10日確認)

これは3件の事例であり、相場ではありません。 統計として集計された数字ではなく、契約の組み立て方(区分地上権の設定、支柱部分の賃貸借、耕作の委託など)もそれぞれ異なります。また3件はいずれも営農型の事例であり、農地全体を転用して貸す場合(野立て)の地代ではありません。

野立ての場合の賃料水準については、公的な資料を確認できませんでした。土地の条件によって提示額に幅が出るため、複数の事業者から条件を示してもらって比べる方法が現実的です。

条件は土地の面積、日照、接道、系統への接続のしやすさによって大きく変わります。提示された条件が妥当かどうかは、複数の事業者に確認したうえで判断されることをおすすめします。売却の方向で検討される場合は、提携する宅地建物取引業者へおつなぎします。

やめるとき、20年後に何が残るか

太陽光発電の検討で見落とされやすいのが、終わり方です。ここは営農型と全面転用型で扱いが異なります。

営農型の場合、撤去と原状回復は「もしものときの話」ではなく、許可の条件そのものとして付されます。ガイドラインは一時転用許可に付ける条件として次を挙げています。

下部の農地における営農が行われない場合又は営農型太陽光発電に係る事業が廃止される場合には、支柱を含む当該設備を速やかに撤去し、農地として利用することができる状態に回復すること

営農の適切な継続が確保されなくなった場合、農地転用許可権者はまず改善措置を指導します。営農が行われない場合、事業が廃止される場合、または指導しても改善措置が講じられない場合には、設備を撤去するよう指導するものとされています。その指導にも従わないときは、勧告や農地法第51条第1項の規定による処分または命令を検討するものとされています。命令に正当な理由なく従わなかったときは、違反転用事案に関する情報の公表が検討されることも定められています。

撤去や原状回復の指導を受けるのは「一時転用許可を受けた者」です。 設置者と営農者が異なる場合、誰が許可を受ける立場になるのかによって、撤去の責任を負う人が変わります。発電事業者が撤退したり事業を続けられなくなったりしたときに誰がパネルを撤去するのかは、契約の段階で確認しておく必要があります。

全面転用型の場合、農地としての利用を終える前提の手続です。将来また農地として使いたいと考える可能性が残っているのであれば、その点も含めて検討する段階に入ります。

固定資産税の扱いは転用の前後で変わり得ますが、評価の方法は市町村によって異なります。税額の個別の判断は税理士の領域です。考え方の整理は農地を放置すると税金はどうなるのかをご覧ください。

近隣とのあいだで何が起きやすいのか

農地に太陽光発電設備を置く場合、周囲との関係が問題になることがあります。国も、事業者に対して周辺への配慮を求めています。

資源エネルギー庁の事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)(2026年4月改訂)は、遵守事項として次を定めています。

  • 発電設備または発電設備を囲う柵塀等の外側の見えやすい場所に標識を掲示すること(20kW未満の太陽光発電設備の場合を除く)
  • 事業に関係ない者が発電設備にみだりに近づくことがないよう、適切な措置を講ずること
  • 安定的かつ効率的に発電事業を行うために発電設備を適切に保守点検及び維持管理すること

あわせて努力事項として、事業計画作成の初期段階から地域住民と適切なコミュニケーションを図ること、環境アセスメント手続の必要がない規模の設置計画についても自治体と相談のうえ説明会の開催等に努めることが挙げられています。

同ガイドラインは土地の選定にあたって「反射光等による地域住民の住環境への影響がないように考慮することが必要である」とし、維持管理の段階でも「雑草の繁茂等による周辺環境への影響がないように管理するように努めること」を求めています。

裏を返せば、反射光、雨水や土砂の流出、雑草の繁茂、部外者の立入りが、実際に問題になりやすい項目ということです。農地は周囲も農地であることが多く、隣で耕作を続けている方への影響は避けて通れません。設置後の草刈りと管理については太陽光発電用地の草刈りと管理で整理しています。

よくある質問

費用はどのくらいかかりますか

設備の規模、造成の要否、系統への接続条件によって大きく変わるため、一律の目安をお示しすることができません。営農型の場合は営農計画書の作成など申請側の手間も加わります。個別に見積りを取っていただく必要があります。転用手続そのものにかかる費用の内訳は農地転用の費用はいくらかかるか【内訳の考え方】で整理しています。

補助金は使えますか

国の制度は地域の協議会が対象で、神奈川県・横浜市の制度は自家消費型であることが要件です。売電を目的とした野立ての太陽光発電は、いずれの要件からも外れます。詳しくは本記事の「補助金は使えるのか」をご覧ください。

荒廃した農地でもできますか

制度上の「遊休農地」に該当すると判定された農地を再生利用する場合、営農型の一時転用許可の期間は10年以内の区分に当たります。また、営農の適切な継続の判断において「おおむね2割以上の単収の減少」の基準は、遊休農地を再生利用する場合には適用しないこととされています。荒れている農地に対しては、制度上やや緩やかな扱いが用意されています。ただし、ご自身の農地が制度上の遊休農地に当たるかどうかは農業委員会の判定によります。耕作されていない農地の選択肢全般は耕作放棄地になってしまった土地への対策で整理しています。

生産緑地の指定を受けている農地はどうですか

生産緑地地区内では、建築物や工作物の設置、土地の形質の変更について制限があります。太陽光発電設備が認められるかどうかは、構造・用途・営農との関係によって個別に判断されるため、一律にお答えできません。市町村の生産緑地の担当課へご確認ください。

駐車場や資材置き場と比べてどうですか

用途ごとに求められる計画の内容が異なります。他の用途との比較は農地を駐車場・資材置き場・太陽光にできるかで整理しています。

まとめ

農地に太陽光発電を設置することは制度上可能ですが、判断の順序があります。

まず農地区分です。第3種農地は原則として許可する方針である一方、農用地区域内農地・甲種農地・第1種農地は原則として許可しない方針とされています。ここで見込みが立たなければ、その先の検討は進みません。

次に方式です。営農を続けない前提であれば全面転用型ですが、2027年度以降、地上設置の事業用太陽光は国の買取制度の支援対象から外れます。売電収入を前提とした計画は、組み立て方が変わります。営農型は営農の継続と毎年の報告が伴うため、耕作を続ける予定がない方には選びにくい方式です。

そして終わり方です。営農型では設備の撤去と農地への回復が許可の条件として付され、営農が行われない場合には撤去の指導、勧告、農地法第51条による命令へと進む仕組みが用意されています。20年先に誰が何を負担するのかを、始める前に確認しておく必要があります。

「置けるかどうか」は土地の条件で決まります。区分と区域が分かれば、取りうる選択肢はかなり絞り込めます。

太陽光が向く土地かどうか、現況の整理からご相談いただけます

地番・区域区分・農地区分について、公開情報で確認できることと、窓口への照会が必要な項目を無料で整理してお伝えします。太陽光以外の活用方法とあわせて選択肢を並べてご説明します。

お電話でのご相談: 03-6869-4326(受付 平日10:00〜17:00)

本記事は制度の一般的な内容をご説明するものです。個別の土地について何が可能かは、区域区分・農地区分・現況・権利関係等により異なります。農地転用の許可申請は行政書士、登記は司法書士、税務の個別判断は税理士の領域であり、必要に応じて専門家と連携してご案内します。土地の売買については提携する宅地建物取引業者へおつなぎします。設備の費用と収支は事業者ごとに異なるため、実際の見積りをご確認ください。記載内容は2026年8月10日時点で確認した情報に基づきます。買取価格および制度の内容は年度ごとに変わるため、最新の情報は各省庁の公式サイトをご確認ください。

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この記事を書いた人

横浜市周辺の農地・市街化調整区域の土地について、国や自治体が公表している情報をもとに、所有者の方がまず確認すべきことを整理して発信しています。登記・許認可・測量・税務・売買の各手続きは、それぞれの分野の専門家と連携して進めます。

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