親名義のままの農地、草刈りや管理は誰がするのか

親名義のままの農地、草刈りや管理は誰がするのか

親名義のままの農地の草刈りを、自分がやってよいものか迷っていませんか。名義と管理の関係を整理した記事です。

現状を保つ行為であれば、相続人の一人でも進められる場合があります。 民法252条5項は「各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる」と定めています。

一方、売却や長期の貸借は同じようにはいきません。 同条1項は管理に関する事項を持分の価格の過半数で決するとし、251条1項は形状又は効用の著しい変更を伴うものに他の共有者の同意を求めています。

そして、名義を放置していても期限は進みます。 相続登記は取得を知った日から3年以内(不動産登記法76条の2)、農業委員会への届出は農地法3条の3に基づき必要です。どちらにも10万円以下の過料の定めがあります。 無許可だった場合の効果と罰則は農地法とはにまとめています。

目次

名義が親のままでも管理の必要はなくならない

登記簿が亡くなった親名義のままでも、農地そのものは存在し、雑草は伸びます。相続開始後、遺産分割が終わるまでの遺産は、原則として相続人の共有状態になります。登記を変えていないことと、誰にも権利や管理との関わりがないことは同じではありません。

道路への草の張り出し、害虫、ごみの投棄、枯れ草の火災などを防ぐには、当面の管理担当を決める必要があります。近くに住む相続人が一人で作業していても、その人だけが所有者になったと決まるわけではありません。

まず、相続人へ連絡し、「処分の結論ではなく、現状維持のための草刈りをどうするか」を分けて話します。作業範囲、時期、費用負担、写真の共有方法を記録します。

草刈りと土地の処分では権限が違う

共有物への行為と決め方を示した図。保存行為(現状を保つ)は各共有者が単独でできる、管理に関する事項と土地の賃借権等の設定(5年以内)は持分の価格の過半数、変更(著しい変更を伴うもの)は他の共有者の同意が必要

民法は、共有物への行為を次のように分けています。

行為誰が決められるか根拠
保存行為(現状を保つ)各共有者が単独でできる民法252条5項
管理に関する事項持分の価格の過半数民法252条1項
土地の賃借権等の設定(5年以内)持分の価格の過半数民法252条4項2号
変更(形状又は効用の著しい変更を伴うもの)他の共有者の同意民法251条1項

草刈りや危険物の除去は、保存行為として一人でも進められる場合があります。 一方、樹木の伐採、造成、長期間の利用変更などは、単純な保存行為とは限りません。土地の状態を大きく変える前に、相続人間の合意と法的確認が必要です。

売却、長期の貸借、農地転用は、日常の草刈りとは性質が異なります。亡くなった親の名義のまま、管理をしている一人だけで土地全体を処分できるとは限りません。遺産分割と相続登記を進め、契約する権限を明確にします。

農地には農地法上の手続きもあります。相続自体は農地法3条の許可対象ではありませんが、相続により権利を取得したときは農業委員会への届出が必要です(同法3条の3)。届出をせず、または虚偽の届出をした場合は、同法69条により10万円以下の過料に処するとされています。

期限の案内は情報源によって分かれます。 条文は「遅滞なく」、農林水産省は「相続発生日からおおむね10か月以内」、横浜市中央農業委員会は「相続の日から届出までの期日は特に定めはありません」としています。詳しくは農地を相続したら農業委員会へ届出が必要です(農地法3条の3)をご覧ください。

その後に貸す、売る、転用するときは、それぞれ別の手続きを確認します。

相続登記は2024年4月から義務になった

相続で不動産を取得したことを知った相続人は、その取得を知った日から3年以内に相続登記を申請することが原則です。正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。制度開始前の相続で名義が残っている土地も対象です。

遺産分割がまとまらない場合に、相続登記の申請義務を履行するための相続人申告登記という制度もあります。ただし、これは遺産分割の結果を登記する手続ではなく、売却などのための所有権移転を完成させるものでもありません。

必要な手続は事情によって異なります。農地の相続登記の基本を確認し、登記申請や相続人の確定は司法書士へ相談してください。

家族で最初にそろえる資料

最初に、固定資産税の納税通知書、登記済証や登記識別情報、登記事項証明書を集めます。土地が何筆あるか、地番、地目、面積、共有持分を確認します。現地の場所が分からない場合は、公図や地図も使います。

次に、親の出生から死亡までの戸籍などを通じて相続人を確認します。遺言書の有無、遺産分割協議の有無も確認が必要です。家族の記憶だけで相続人を決めず、公的資料で確かめます。

管理面では、これまで誰がいつ草刈りをしたか、費用を誰が負担したか、近隣から連絡があったかを一覧にします。立替費用の扱いは相続人間の問題になるため、領収書と写真を残します。

登記が終わるまでの管理を止めない

戸籍収集や話し合いには時間がかかる場合があります。その間も、道路や隣地へ草が張り出していないか、枯れ草や投棄物がないかを確認します。現地へ行けないときは、作業前後の写真、作業範囲、刈草処分の有無を報告してもらいます。

草刈り見積りを取る際は、依頼者が相続人であること、名義が親のままであること、他の相続人との連絡状況を伝えます。境界が曖昧な場合は、勝手に範囲を広げず、分かる範囲を示してください。

名義整理と当面の管理を同時に進めたい方は、地番・相続状況・現況を整理する無料一次診断から始められます。管理業者へ依頼する前には、代表して連絡する相続人を決めます。見積りを取る人と費用を負担する人が異なる場合は、その点も書面で共有します。作業依頼が遺産分割への同意を意味するものではないことを相続人間で確認しておくと、管理の話と所有の話を混同しにくくなります。

よくあるご質問

親名義のままでも草刈りを頼めますか。

民法252条5項により、保存行為は各共有者が単独でできるとされています。現状を保つ範囲の作業であれば、これに当たる場合があります。費用の負担については相続人間で確認しておいてください。

一人で売却できますか。

できません。民法251条1項は、形状又は効用の著しい変更を伴うものに他の共有者の同意を求めています。売却や長期の貸借は、遺産分割と相続登記を進めて権限を明確にしてから進めることになります。

名義を変えないままだと、どうなりますか。

相続登記の申請義務は残ります。不動産登記法76条の2第1項により取得を知った日から3年以内、同法164条1項により正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。

農業委員会への届出も必要ですか。

必要です。農地法3条の3により、相続等で農地の権利を取得した者は農業委員会へ届け出ることとされ、同法69条に10万円以下の過料の定めがあります。相続登記とは別の手続きです。

遺産分割がまとまりません。

不動産登記法76条の3の相続人申告登記により、期間内に申し出れば申請義務を履行したものとみなされます。ただし名義が移るわけではなく、売却などのための所有権移転を完成させるものでもありません。

草刈りの費用は誰が負担しますか。

相続人間の取り決めによります。作業範囲、時期、費用負担、写真の共有方法を記録に残しておいてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

横浜市周辺の農地・市街化調整区域の土地について、国や自治体が公表している情報をもとに、所有者の方がまず確認すべきことを整理して発信しています。登記・許認可・測量・税務・売買の各手続きは、それぞれの分野の専門家と連携して進めます。

目次