農地転用の手続きで、思わぬところでつまずきたくない。よくある失敗を先に知っておきたい方に向けた記事です。
最も重いつまずきは、許可前に工事を始めてしまうことです。 農地法64条は、4条1項・5条1項の規定に違反した者を3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処するとしています。同法67条により、法人には1億円以下の罰金刑が科されます。 許可の種類と許可権者の違いは農地法の3条・4条・5条をご覧ください。
さらに同法51条により、許可の取消し、工事の停止命令、原状回復その他の是正措置を命じられることがあります。造成した土地を元に戻す費用は、当然ながら自己負担です。
この記事では、この点を含め、農地転用でつまずきやすい箇所を条文にもとづいて整理します。
用途が曖昧なままでは計画を審査できません

「使っていないので雑種地にしたい」というだけでは、転用後の目的が明確ではありません。農地転用の一般基準では、申請した用途を実現できるかが確認されます。駐車場なら利用者、台数、出入口、排水を、資材置場なら資材の種類、量、車両動線を具体化します。
必要な面積が用途に比べて過大な場合や、資金の準備が確認できない場合も、計画の確実性が問題になる可能性があります。設備の契約や造成を先行させず、配置図と工程を整えて農業委員会へ相談します。
境界と権利関係が途中で問題になります
公図と現地の塀や杭が一致するとは限りません。出入口、擁壁、排水設備が境界を越える計画では工事を進められない可能性があります。「筆界」は登記された土地の範囲を区画する線で、所有者同士の合意だけで変更できるものではないと法務局は説明しています。
共有地では共有者との調整が必要です。抵当権、賃借権、通行や水路に関する権利がある場合も確認します。境界の調査や測量は土地家屋調査士、権利に関する登記は司法書士へ相談する領域です。
排水と周辺農地への影響を後回しにしない
農地を舗装したり盛土したりすると、雨水の流れが変わります。一般基準では、土砂の流出、排水、周辺農地の営農条件への支障を防ぐ措置が確認されます。排水先が他人の土地や水路なら、管理者や関係者との協議が必要になる場合があります。
隣接地の同意書が常に必要とは限りませんが、事業内容や排水計画に応じて関係者の同意や説明が必要になります。形式的に印をもらう前に、どの設備をどこへ設け、維持管理を誰が行うかを明確にします。
農振除外と他法令には別の時間がかかります
農用地区域内農地、いわゆる青地は原則として転用できません。農地転用の前に農用地区域からの除外を検討する場合がありますが、除外にも要件と受付時期があります。申出をすれば除外されるわけではなく、農地転用とは別の審査です。 青地・白地の違いと除外の要件は農地の「青地」「白地」とはで整理しています。
青地に当たる可能性は低くありません。 当サイトでeMAFF農地ナビの公表データ(横浜市内 32,259筆)を集計したところ、農用地区域内(青地)が35.0%でした。公表されている農地のうち、およそ3件に1件です(2026年8月13日取得。市街化区域内の農地は非公表のため含まれません)。 この集計の全体は横浜市の農地データで公開しています。
計画を立てる前に、まずここを確認してください。 調べ方は自分の農地の地番・場所が分からないときの調べ方で整理しています。
日程の制約も押さえておいてください。 横浜市中央農業委員会は、総会が基本的に毎月26日開催、審議される案件は当月10日までに提出されたものに限る、農地法の許可について事前相談から受付まで1か月以上かかることがある、と案内しています。間に合わないからと先に工事を始めると、上記の違反になります。
市街化調整区域で建物を伴う場合は、都市計画法上の開発・建築の可否を確認します。道路、盛土、排水、埋蔵文化財など別制度が関係する可能性もあります。農地法だけ先に進めず、関係部署の見込みを並行して確認します。転用できない土地の基準も参考になります。
許可前着工と計画変更に注意します
許可申請が受け付けられたことは、許可されたこととは異なります。
農地法51条1項は、都道府県知事等が違反転用者等に対し、許可の取消し、条件の変更、工事その他の行為の停止命令、相当の期限を定めた原状回復等の措置を命ずることができるとしています。対象には、違反した者本人だけでなく、その者から工事を請け負った者や下請人も含まれます。
罰則は同法64条です。
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項、第四条第一項、第五条第一項又は第十八条第一項の規定に違反した者
二 偽りその他不正の手段により、第三条第一項、第四条第一項、第五条第一項又は第十八条第一項の許可を受けた者
三 第五十一条第一項の規定による都道府県知事等の命令に違反した者
同法67条1号により、法人の代表者や従業者が4条1項・5条1項に係る違反行為をしたときは、法人に対して1億円以下の罰金刑が科されます。
許可後も、申請と異なる用途や配置へ変更すると追加手続が必要になる場合があります。
許可条件、工事完了後の報告、地目変更登記の時期を確認し、書類を保管します。売買が関係する5条では、契約、許可、決済、所有権移転、工事の順序を関係専門家とそろえます。
相談記録と最新版の書類を残します
窓口へ相談したら、相談日、部署名、担当者、確認した地番、用途、回答を記録します。計画を変更して再相談するときは、前回から変えた点を明示します。口頭の説明だけで工事や契約を進めず、必要に応じて提出書類や許可条件で確認します。
制度や様式は改定されることがあります。以前に取得した案内や、近隣の別の土地で使った書類をそのまま利用せず、申請時点の横浜市の案内を確認します。同じ町内でも農地区分、接道、排水条件は異なります。
許可後は、許可書、図面、工事写真、完了報告、登記関係書類を一つにまとめます。将来の売却や相続の際に、いつ、どの範囲を、何の用途で転用したかを説明しやすくなります。申請者と工事業者にも許可内容を共有し、現場で図面と異なる施工が行われないよう確認します。
よくあるご質問
許可前に工事を始めるとどうなりますか。
農地法64条により、4条1項・5条1項の規定に違反した者は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処するとされています。同法67条により、法人には1億円以下の罰金刑が科されます。あわせて51条により、許可の取消し、工事の停止命令、原状回復等の措置を命じられることがあります。
工事を請け負った業者にも責任がありますか。
農地法51条1項3号は、違反した者から当該違反に係る土地について工事その他の行為を請け負った者、またはその下請人も対象としています。
申請が受理されたら着工してよいですか。
受理と許可は別です。許可または届出の受理前に造成すると違反転用となる可能性があります。
青地かどうかはどう確認しますか。
eMAFF農地ナビまたは管轄の農政事務所で農振法区分を確認できます。同ナビに公表されている横浜市の農地では、農用地区域内(青地)が35.0%でした(2026年8月時点、市街化区域内の農地を除く)。
隣接地の同意書は必ず要りますか。
常に必要とは限りませんが、事業内容や排水計画に応じて関係者の同意や説明が必要になります。どの設備をどこへ設け、維持管理を誰が行うかを明確にしてください。
境界が曖昧なまま進められますか。
出入口、擁壁、排水設備が境界を越える計画では工事を進められない可能性があります。境界の調査や測量は土地家屋調査士へご相談ください。
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