農地の雑草で苦情が来たら【所有者の義務と対応】

農地の雑草で苦情が来たら【所有者の義務と対応】

ご近所から雑草の苦情が来てしまい、どう対応すればよいか困っていませんか。苦情を受けた農地の所有者の方に向けて、対応の順序を整理しました。

対応は、①指摘された範囲と現況を確かめる → ②誰が手配するかを決める → ③道路や境界など影響の大きい場所から刈る、の順で進めます。 市が代わりに刈ることは前提にできないため、所有者側で動く必要があります。

放置すると近隣との関係がこじれるだけでなく、行政からの通知につながることもあります。逆に言えば、順序どおりに動けば収められるトラブルです。根拠となる法律や横浜市の案内は、本文の中で順に確認していきます。

ただし、貸している土地や共有地では、契約や取り決めによって実際に管理する人が異なることがあります。所有者本人が手配するとは限らないため、そこを先に決める必要があります。

目次

まず確認すること

草が伸びた土地。舗装の割れ目から雑草が生い茂り、奥に住宅が建っている
草が伸びた土地。隣地や道路へ張り出すと、苦情につながることがあります(写真提供:株式会社メイクリーン)

連絡を受けたら、次を押さえてください。

  1. 地番 — どの土地の話か。複数所有していると取り違えが起きます
  2. 連絡者 — 近隣の方か、区役所か。どちらから来たかで、その後のやり取りの相手が変わります
  3. 指摘された範囲 — 道路への張り出しか、隣地への越境か、枯れ草やごみか
  4. 現在の状態 — 写真を送ってもらうか、現地を確認する

すぐ現地へ行けないときは、その旨と確認予定を伝えてください。 いつまでに何を確認するかを先に示しておくと、そのあとのやり取りの前提がそろいます。遠方にお住まいの場合の進め方は横浜の農地を遠方から相続・所有している方へで整理しています。

農地には条文上の責務があります

農地法2条の2が定める権利者の責務を示した図。誰が負うかは所有権だけでなく賃借権その他の使用収益を目的とする権利を有する者、何を求められるかは農業上の適正かつ効率的な利用を確保するようにすること、この条文に罰則の定めはない

農地法2条の2は、農地について権利を有する者の責務を次のように定めています。

農地について所有権又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を有する者は、当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保するようにしなければならない。

対象は所有者に限られません。 賃借権その他の使用収益を目的とする権利を有する者も含まれます。借りている人がいる農地では、誰がこの責務を負う立場にあるかを契約とあわせて確認してください。

なお、この条文は草刈りの回数や方法を定めるものではありません。罰則の定めもありません。 ただし、耕作されていない農地については、農業委員会による利用状況調査や利用意向調査の対象となる仕組みがあります。耕作放棄の状態が続く場合の流れは耕作放棄地になってしまった土地への対策で整理しています。

行政に何を期待できるか

横浜市は、建物を伴う空家について対応の枠組みを示しています。横浜市は相談対応の流れを次のように示しています。

  1. 相談受付 — 空家の所在を特定し、被害状況を聞き取る
  2. 現地調査 — 職員や委託された業者が現地調査を行う。現況の写真を撮影したり、近隣の方へ話を聞くことがある
  3. 所有者調査 — 登記簿等を取得し、所有者の氏名や住所を調べる
  4. 働きかけ — 調査結果に応じて文書を送付し、適切な管理を行うよう伝える

出典:横浜市「近隣の空家でお困りの方」(2026年8月13日確認)

ただし横浜市は、この「働きかけ」は所有者等に対し強制力を持つものではないと明記しています。

あわせて注目したいのが、所有者調査に要する期間です。 横浜市は「登記簿等が未更新な場合や相続が複雑化している案件もあり、調査に1年以上かかることがあります」と示しています。

登記簿が未更新であることが、調査に時間を要する要因として挙げられている点に注目してください。行政からの連絡を待つ間も雑草は伸び、近隣との関係は動きます。名義が親や祖父母のままであれば、苦情への対応と並行して相続登記の確認をお勧めします。

優先して刈る場所を決める

土地全体を一度に刈れない場合、所有者は影響の大きい場所から手を付けることになります。優先順位は次のとおりです。

  • 道路への張り出し — 通行や見通しに影響します
  • 隣地との境界付近 — 越境は当事者間の問題になります
  • 出入口の周辺 — 人が通る場所です

刈草を積んだままにすると、飛散や枯れ草の問題が残ります。 回収・処分までを作業範囲に含めるか決めてください。刈った草の扱いは刈った草の処分方法と費用の考え方で整理しています。

枯れ草が広がっている場合の火災リスクは枯れ草の火災リスクと土地所有者の責任をご覧ください。

誰が手配するかを決める

所有者本人が耕作していない場合、実際の管理者が別にいることがあります。

  • 貸している相手(賃貸借・使用貸借)
  • 共有者
  • 相続の手続きが済んでいない場合の相続人

契約や話し合いの内容を確認し、誰が草刈りを手配するかを決めてください。管理責任の法的判断に争いがある場合は、弁護士へご相談ください。 当サイトでは判断しません。

共有名義の場合の進め方は共有名義の農地で起きる問題と整理の進め方、親名義のままの場合は親名義のままの農地、草刈りや管理は誰がするのかで整理しています。

業者へ伝える内容

所有者が草刈り業者へ見積りを依頼するときは、次の情報を伝えると精度が上がります。

  1. 住所と地番、おおよその面積
  2. 草丈と、最後に刈った時期
  3. 傾斜の有無、石・樹木・ごみの有無
  4. 車両の進入可否、駐車場所
  5. 刈草の処分を含めるかどうか
  6. 作業範囲(境界が不明なら、隣地まで刈らないよう明示する)

作業前後の写真を依頼すると、遠方からも確認できます。 苦情を受けた相手に状況を伝える材料にもなります。

費用は面積、草丈、処分量によって変わります。樹木伐採、竹の処理、ごみ回収は草刈りと別作業になる場合があります。料金の決まり方は草刈り業者の料金相場と選び方で整理しています。

再発を抑える

一度刈っても雑草は再び伸びます。一度の作業で終わらせず、次に伸びるまでの手当てを決めておいてください。

  • 時期を決めた巡回、定期的な草刈り
  • 近隣から連絡を受けられる管理先を示しておく
  • 刈る時期を、伸びきる前に設定する

防草シートや砕石の敷設は、注意が要ります。 農地としての利用に影響する工事は農地転用に当たる可能性があるため、先に農業委員会へご確認ください。将来耕作しない場合も、無断で別用途へ変えることは避けてください。

刈る頻度の考え方は草刈りの頻度はどのくらいが適切か、刈り続けた場合の負担は草刈り費用と固定資産税、10年続けるといくらになるかで整理しています。

よくあるご質問

空き地の雑草について、市役所が刈ってくれますか。

横浜市は空き地を空家法の対象外としています。建物を伴う空家であれば現地調査や所有者への働きかけが行われますが、横浜市はこの働きかけに強制力はないと明記しています。

苦情が来ましたが、遠方に住んでいてすぐ行けません。

すぐ現地へ行けない旨と、いつまでに何を確認するかを先に伝えてください。写真を送ってもらえれば状況を把握できます。現地確認と作業を業者へまとめて依頼する方法もあります。

貸している農地の草刈りは誰がしますか。

契約の内容によります。賃貸借・使用貸借の取り決めを確認してください。争いがある場合は弁護士へご相談ください。

防草シートを敷いてもよいですか。

農地としての利用に影響する工事は農地転用に当たる可能性があります。着手前に農業委員会へご確認ください。

行政から文書が届きました。従う義務はありますか。

横浜市は、空家に対する「働きかけ」について所有者等に強制力を持つものではないと明記しています。ただし放置すれば近隣との関係や次の段階の対応に影響し得るため、状況の確認をお勧めします。

隣の土地の草が越境しています。刈ってよいですか。

他人の土地の草木を無断で切ることは避けてください。隣の空き地の草を勝手に刈ってもよいかで条文にもとづいて整理しています。

対応の順序

苦情を受けた所有者が対応を進める順序をまとめると、次のようになります。

  1. 地番・指摘内容・現況を確認する
  2. 誰が手配するかを決める(貸している・共有・相続中の場合は特に)
  3. 影響の大きい場所から刈る(道路・境界・出入口)
  4. 作業範囲と刈草の処分を業者と決め、写真を残す
  5. 次に伸びる前の巡回・草刈りの時期を決める

管理の負担そのものを減らす方向は農地の草刈り・管理の負担を減らしたい方へで整理しています。草刈りのご依頼は農地・空き地の草刈りのご依頼から承ります。

本記事は制度の一般的な内容をご説明するものです。管理責任の所在や近隣との紛争の解決について、個別の判断は行っていません。争いがある場合は弁護士へご相談ください。記載内容は2026年8月時点の情報に基づきます。

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この記事を書いた人

横浜市周辺の農地・市街化調整区域の土地について、国や自治体が公表している情報をもとに、所有者の方がまず確認すべきことを整理して発信しています。登記・許認可・測量・税務・売買の各手続きは、それぞれの分野の専門家と連携して進めます。

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